1928年設立の国立移民収容所は神戸移住教養所、外務省神戸移住斡旋所(あっせんしょ)、神戸移住センターと時代の流れに応じて名称を変えていった。戦時中は軍の施設となったが、戦後は看護婦の養成機関として使用された。
1995年、阪神・淡路大震災に見舞われたが、建物は健在だったので、一時神戸海洋気象台の仮庁舎として使われた。1999年にC.A.P.ハウスとして活用されたのを契機に、神戸移住資料室がもうけられ、関西ブラジル人コミュニティの活動拠点ともなった。
1920年代
1928年2月に国立移民収容所の建物が完成し、南米、とくにブラジル移住者中心の拠点になった。建物は鉄筋コンクリートの5階建てで、「洋館」としての威容をほこり、最初は「寝台数600をそなえた建坪252坪、延坪1080坪」の施設としてスタートした。建物全体が甲板をもつ船のようでもあり、廊下や階段も船のそれを連想させるつくりとなっており、すこしでも船内の雰囲気に慣れてもらうために設計されたと言われています。
1930年代
1930年3月、「建坪158坪、延坪428坪、4階建て鉄筋コンクリート」の増築がおこなわれ、250台の寝台を増設し、1100名の宿泊が可能となった。1932年長崎市にも南洋方面への移住者を対象とする同様の施設が短期間ではあったが設置された。捕虜を連想する「収容」の言葉を避け、「保護教養」を目的とする移住教養所に改名された。また移住者の健康管理も施設の重要な任務のひとつであり、診察室、治療室、薬局、医局などが設けられた。
1940年代
1941年、太平洋戦争のため神戸移住教養所は閉鎖され、1942年から短期高等海員養成所(のちに高等商船学校専科)の校舎となり、航海科150人、機関科150人、計300人の商船士官を練成する施設となった。大東亜要員錬成所ともよばれていた。彼らはこの校舎で1年間学んだ後、横須賀で軍事教育を受けた。
1950~1960年代
戦前の拓務省管轄下の神戸移住教養所は外務省の神戸移住斡旋所として1952年10月に業務を再開した。戦後の南米移住は1950年代後半から1960年代初頭にかけて最盛期を迎え、ブラジルのコチア産業組合の受け入れによる「コチア青年」や技術者向けの「工業移住」もおこなわれた。1964年10月には外務省から海外移住事業団に移管され、名称も神戸移住センターに変更された。
1970年代~1999年代
日本の高度経済成長にともない海外移住は下火となり、1971年5月に神戸を出航した日本最後の移民船「ぶらじる丸」を見送って、神戸移住センターは閉鎖された。「移民さん」と親しみを込めてよばれた人たちが最後の1週間から10日間をすごした建物はその使命を果たし終えたのです。
1972年4月から1983年3月までは神戸市立高等看護学院として使われ、1994年3月まで神戸市医師会准看護婦学校として使用された。
1995年~1999年
1995年1月17日未明、神戸は未曾有の阪神・淡路大震災に見舞われ、死者6433人、全壊・半壊の建物が約25万棟(約46万世帯)にのぼった。この大規模地震にもかかわらずこの建物は倒壊を免れ、被害を受けた神戸海洋気象台が一部を仮庁舎として1995年4月から1999年9月まで使用された。
1999年~2007年
1999年11月神戸市から委託を受けたNPO法人 芸術と計画会議(C.A.P.)が「アーティスト・イン・レジダンス(生活とともにある芸術家)」の思想のもとにアートスペースとして活動をはじめた。 「移民さん」の寝室は芸術家たちが創作活動にはげむアトリエとしてよみがえり、創作はもとより、展示、コンサート、レクチャー、林間学校など各種の公開イベントが多彩にくりひろげられた。 これと並行して、1階には神戸移住資料室がもうけられ、4階には関西ブラジル人コミュニティの活動拠点となった。移民の歴史を振り返り、日系人の支援活動が始まった。 こうした活動が続けられる中で、ブラジル現地の日系団体から永久保存を求める声がわきあがり、財団法人日伯協会が中心となって、国立海外日系人会館推進協議会が発足し、県・市を巻き込んでの議論と国への陳情が展開された。
2007年~2009年
2007年に国・県の協力のもと神戸市の決断により、旧神戸移住センターの建物の保存・再整備が決まった。ブラジル移住100周年を記念する2008年4月28日に着工宣言が行われ、同年5月工事着工、2009年6月に完成した。2009年6月3日開館式典が挙行され、「希望と未知への船出の広場」「多文化との共生の広場」「芸術を生かした創生の広場」という3つの機能をもつ「海外移住と文化の交流センター」としてスタートした。
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